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本間忠良 衝撃の新刊 知的財産権と独占禁止法−−反独占の思想と戦略

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経済法あてはめ演習60選(日本語)Antimonopoly Act  Exercise 60 Cases

情報革命についてのエッセイとゴシップ(日本語) Essays and News on Information Revolution

論文とエッセイ(日本語)Theses and Essays

 

 

技術と競争−−米国におけるプロパテント運動の幻影

『パテント』(弁理士会、1997年12月)

本間忠良

目次:
1.歴史の概観
2.プロパテントの思想
3.米国司法におけるプロパテントの方向
3.1.権利の範囲
3.1.1.ソフトウエア特許
3.1.2.均等論
3.2.権利の価値
3.3.権利の実現
3.4.権利の限界
おわりに

 

1.歴史の概観

 歴史は谷川を流れくだる小舟からの眺めに似ている。私たちの目にはすぐ横の川岸しか見えない。しばらくして、はじめていままで通ってきた川筋の地形がわかってくる。米国におけるいわゆるプロパテント(1)運動がはじまって15年たったいま、その全体像がそろそろ見えてきてもいいころである。

 知的財産法と競争法を相互に抑制させることによって、革新投資のための超過利潤創出と市場原理の貫徹という相反するふたつの社会的要求の間の均衡を確保しようという発想は、米国連邦裁判所での長い歴史を持つ。

 第二次大戦前のほとんどの判例は、ライセンシーに対して非特許材料・サービスの購買を義務づける抱き合わせ慣行に対するものだった。ここで利用された法的ツールは、 主として特許権の濫用だった(2)。のち、違法類型が多様化するとともに、反トラスト法違反がしだいに権利濫用にとってかわる(3)

  第二次大戦後、映画の二本立て配給という著作物の抱き合わせを反トラスト法違反とする判決が出現した(4)。最高裁は、ラジオの特許プールをいちどは合法とした(5)が、20年後、判例を変更して、テレビの特許プールを反トラスト法違反とした(6)。連邦栽は、ほかにも、特許期間をこえるロイヤルティ支払義務(7)、差別的ロイヤルティ(8)、過大なロイヤルティ(9)、強制的パッケージ・ライセンス(10)、特許効力不争義務(11)を違法としている。これら諸判決をまとめたのが、1975年ごろ司法省が流布させた非公式ガイドライン「ナイン・ノー・ノーズ」(12)である。

 米国におけるプロパテント・ビッグバンは、1982年にはじまったといってよい。米国司法省が、13年かかってやってきたIBM相手の反トラスト訴訟をとりさげた。そのIBMが、日の丸コンピューター3社に対してトレード・シークレットと著作権による法的攻勢をかけた。なによりも重要なのは、1982年10月、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が創設されたことである。こと特許に関するかぎり、これ以後15年の歴史はCAFCの歴史だったといってもいい。

 1983年、パソコンOSの著作物性を否定したアップル対フランクリン地裁判決が巡回裁でくつがえされた。

 1984年、半導体チップ保護法が成立した。IBM事件に反発した日本のプログラム権法構想に対して、米国官民による総攻撃が展開された。これを契機に、知的財産権保護不十分を通商法301条の措置対象とする1984年通商関税法が成立した(これは、1988年包括通商競争力法によっていわゆるスペシャル301条に進化する)。

 1985年レーガン大統領が招集したいわゆるヤング委員会が、米国産業競争力回復のキメ手とし、知的財産権の国際的保護を提唱した。

 1986年、TIが日本半導体メーカー各社をITCに提訴、和解金で10億ドルちかく稼いだといわれる(13)。プログラムの手順・構造・組織を著作権で保護するウエラン対ジャスロウ巡回裁判決が言い渡された。知的財産権の国際的保護強化を新分野としてふくむGATTウルグアイ・ラウンドがはじまった(14)

 1988年、司法省国際事業反トラスト・ガイドライン(15)は、「当然違法」アプローチのナイン・ノー・ノーズを、よりプロパテントな「合理の原則」アプローチ(16)に置きかえた。与党議員が特許権濫用法理を廃止する法案を上程、これはいったん両院協議会で姿を消したものの、形を変えて再上程され、ライセンス拒否と抱き合わせを特許権濫用事由からはずす現特許法271条(d)(4)、(5)項が成立した(後述)。包括通商競争力法によって成立した同271条(g)は、米国特許の方法を外国で実施した製品に対して米国での権利行使を許すものだが、これによって、いわゆるサブマリン特許として有名なレメルソン特許(画像処理による製品位置検出法)が和解金で5億ドル稼いだといわれる(17)

 90年代にはいると超高額判決が新聞をにぎわせるようになる。1990年ポラロイド対コダック(M$873)、1992年ハネウエル対ミノルタ(M$166)、1993年レメルソン対マッテル(M$87)−−CAFCで逆転、1994年リットン対ハネウエル(3倍賠償としてB$3.6)−−JMOL(18)で逆転、1994年アルペックス対任天堂(M$250)−−CAFCで逆転−−(いずれも後述)などなど。

 米国にはじまり、いま世界をゆるがしているプロパテントの潮流は、そのとどまるところを知らぬかにみえる。本稿は、その成分ベクトルを、主として司法判例のミクロな観察によって探ることを試みる。
 

2.プロパテントの思想: 

 米国におけるプロパテント運動の底には、知的財産と一般の有体財産を同一視する米国独特の知的財産物神観がある。

 米国特許法261条は、「特許は、本法の諸規定にしたがい、私的財産の性質を有する」(下線筆者)とやや循環論的に規定するが、1983年、発足直後のCAFC判決はそれを極限まで拡張してつぎのようにいう。「制定法によれば、特許は財産である」。「特許権は他人を排除する権利にほかならず、定義によって財産である」。「特許に代表される財産権は、他の財産権同様、反トラスト法違反の企図で使うことができる」。「当初の特許法よりはるかのちに制定された反トラスト法は、他人の財産の運用を対象とする」。「有効な特許は、公衆にそれまで持っていなかったものを与える」(19)

 米国司法省の1995年知的財産ライセンシング・ガイドラインもつぎのようにいう。「知的財産諸法と反トラスト諸法は技術革新を促進し、消費者厚生を高めるという共通の目的を有する。知的財産諸法は、新規かつ有用な製品、より効率的な方法、オリジナルな表現作品の創出者のため執行可能な財産権を確立することによって、技術革新・拡散・商品化へのインセンティヴを与える」。「反トラスト分析の目的上、司法省と連邦取引委員会は、知的財産を他のすべての形態の財産と本質的にコンパラブルなものとみなす」。「といってもそれは知的財産がすべての点で他の形態の財産と同じだといっているのではない。知的財産は盗用が容易だという点などで、他の多くの形態の財産と区別される特質を持つ」。「知的財産所有者の排他権はほかの私的財産所有者が享受する諸権利と同一のものである」(20)

 痛烈な批判がある。「知的財産法は、抽象物を所有権の対象に変えるので、マルクスのいう『商品の呪物的性格(フェティシズム)』(21)を補強する。この結果として、ブルジョア経済学は、知的財産をその社会的関係から切りはなして分析する(22)。「知的財産と一般の財産権との類似はほんの表面だけのものにすぎない」(23)。また、知的財産法と競争法の関係が対立的ではなくて補完的だという司法省のユーフォリアについて、「この種の議論はミスリーディングである。知的財産が技術革新を創出するものであれば、それがウエルフェア・ゲインとなることもあるだろう。しかし、その代価が競争過程への干渉なのだ」(24)
 

3.米国司法におけるプロパテントの方向: 

3.1.権利の範囲: 

3.1.1.ソフトウエア特許: 

 1980年代以後の米国司法における特許排他権の消長をたどってみよう。まず目につくのが特許主題の拡張、とくにソフトウエア特許の認知である。もともと、憲法上、特許は、「有用技術」の進歩のために付与されるのだから、特許主題は一定の有形的主題−−方法、機械、製造物、物質の組成−−に限定される(25)。伝統的な米国特許法の概説書には、特許主題に該当しないものとして、自然法則、自然現象、抽象的思想、抽象的原理、(アイデアそれ自体、動機、科学的真理およびその表現、数学式、計算法、経済学説)などが例示されていたものである(26)。しかし、これから述べるような80年代からの判例をみると、これらの例示がいまでも通用するかどうかおおいに疑わしくなっている。たとえば、特許商標庁(PTO)のコンピューター関連発明審査ガイドライン(1996年2月28日連邦官報)(27)は、「あきらかに特許主題非該当といえるものは・・自然現象と・・抽象的思想または自然法則だ」とだけいっている。上述の例示の後半に( )をつけたのは、知的財産システムの研究にたずさわる私の自信喪失を示している 。

 科学的真理の助けをかりて創造された新規・有用な構造、既存の構造や方法に対する自然法則や数学式の応用は特許主題に該当する。この点で、近年問題になっているのが、生物(28)、ソフトウエア、アルゴリズム、医薬品、米国特許方法によって外国で製造された製品(29)などである。

このうち、とくにソフトウエア特許についてややくわしくみてみよう。印刷物を特許主題非該当とした古い判例(「印刷された情報は、それが認識されるためには人の心による処理を必要とするから、特許主題のどれにも該当しない」)(30)を根拠に、特許商標庁は、従来、コンピューターによって制御される方法を特許主題として認めなかった。1972年最高裁のベンソン対ゴッチョーク判決(31)は、2進化10進数を2進数に変換する方法(狭義のアルゴリズム)を特許主題として認めなかった(全員一致)。

 しかるに、1981年最高裁のダイヤモンド対デイーア判決(32)は、ゴム鋳型中の温度を継続的に測定して計算機に入力、アルレニウス式によって加硫時間を再計算して、完了時間をしらせる方法の特許性を認めた(5:4)。これをを突破口として、1994年CAFCのアラパット事件判決(オシロスコープ上の折線を連続的に見せる数学的近似法)(33)、ウォーマーダム事件判決(ロボット衝突防止のための階層仮想バブル・アルゴリズム(アルゴリズムそれ自体のクレームは拒絶)によって生成されるデータでコンフィグしたメモリーを有する装置)(34)、ロウリー事件判決(「データ・ストラクチャーを格納したメモリーは印刷物と同じではない。発明が、情報を、人の心ではなく機械で処理することを要件としている場合、印刷物論は通用しない」として、具体的なデータ・ストラクチャーを特許主題として認めた)(35)は、ソフトウエアやアルゴリズムそのものの特許保護に急接近している。

  これらを受けたPTOの前掲ガイドライン(36)は、1)コンピューター可読媒体に記録されたデータ・ストラクチャーとコンピューター・プログラム(製造物)、2)それらによってコンフィグされたコンピューター(機械)、3)それによって実行される方法(方法)を、特許主題とみなす方針をあきらかにした。

 さいごに、いわゆるアルゴリズム特許に触れておくほうがいいだろう。アルゴリズムそれ自体は特許主題ではないが、それが物理的要素や方法段階に適用されたり、それらに制限される場合、機械、製造物、方法のいずれかで特許になる(Abele-Freeman-Walterテスト)。今後、ソフトウエア特許との切りわけが問題になりそうである(37)

 ここで真に争われているのは、従来、方法特許の直接侵害がユーザーに対してしか主張できなかったのに、こんどは、いままで寄与侵害しか主張できなかったコンピューター・メーカーやソフトウエア・ハウスに対して、機械や製造物の直接侵害として権利主張できるという違いである。いま米国でおこっている、製造業からサービス業への大規模な所得移転の一環であろう。 

3.1.2.均等論: 

 特許権の範囲という視点からもうひとつ注目すべき動きが均等論である。均等論(doctrine of equivalents)(38)とは、発明の本質を剽窃しながら、それに重要でない変更を加えることによってクレームの文言を回避している場合、法廷がこれを侵害と認定する判例原則である(39)。従来のリーディング・ケースである1950年最高裁のグレーバー・タンク判決(40)(6:2)を、あたらしい角度からみてみよう。判決は、まず前提として、「文言上のすべてのデテールをコピーしたわけではないが、特許発明の模倣であるものを放置しては、特許の保護を空虚で無用なものにしてしまう。そのような限定は、破廉恥な模倣者が、特許に非重要かつ非実質的な変更と置換をおこなって・・クレームの外に、したがって法の外に逃げだすことを許し、それを奨励することになる」(41)という。この濃厚なフェアネス志向が、のちに、均等論の適用はエクイティ(衡平法)が命じる場合に限るべきだという下級裁判決(42)をみちびきだした。均等の認定を陪審からはずして判事領域に移そうというのが真のねらいである(43)。おなじエクイティの発想から、審査履歴(prosecution history)エストッペルが出現した(44)

 また、グレーバー・タンク判決は、均等論適用の可否を判断するため、たがいにややあいまいな関係に立つふたつのテストを提示した。その一がいわゆるFWRテストで、「被告製品が、実質的同一の方法によって、実質的同一の機能を果たし、実質的同一の結果をもたらすかどうか」(45)というものである。その二がいわゆる非実質性テストで、「文言上抵触でない被疑製品と、クレーム要件の差異ないし置換可能性が・・均等論の発動を正当化するほど非実質的だったかどうか」(46)というものである。のちの下級裁判決では、このふたつのテストのうち、機械や製造物にとくにうまくあてはまるFWRテストが、あたかも均等判断の唯一の方法でもあるかのように強調されるようになった。

 また、グレーバー・タンク判決は、いわゆるパイオニア特許には陳腐な特許より広い範囲の均等を認めてもよいといっており(47)、これを根拠として、のちの下級裁が、陳腐な特許には狭くしか認めない(48)という動きを示し、均等論の空洞化につながる可能性がでてきていた。

 さらに、下級裁では、均等論の外側で起こった変化(Pennwalt判決(49)でいうオール・エレメント・ルール)の影響で,均等論におけるエレメント・バイ・エレメント・ルールが出現した

 最後に、グレーバー・タンク判決は「均等の認定は事実問題である」(50)ともいっている(後述Markman判決参照)。

 均等論の歴史の総決算が、1997年3月の最高裁ヒルトン・デービス判決(51)である。地裁原被告とも食品着色料メーカーである。原告Hilton Davis(以下「ヒルトン」)の特許は、水素イオン濃度pH(ペーハー)6−9の環境で、半透膜を通して不純物を濾過する方法をクレームしている。pHの上限を9に限定したのは、pH9超の先行特許と区別するためだったことが審査履歴(prosecution history)に記録されているが、下限を6にした理由は記録されていない。地裁被告Warner-Jenkinson(以下「ワーナー」)の濾過法は、たまたまpH5を使っていた(意図的に回避したのではない)。

 オハイオ州南部地区連邦地裁の陪審は、ワーナーの方法がヒルトン特許の均等の範囲に属すると評決、地裁はこれにもとづいて損害賠償および永久差止め判決を言い渡し、CAFCが7:5の僅差でこれを容認した(52)。しかるに、グレーバー・タンク事件以来ほぼ半世紀ぶりに均等論を審理した連邦最高裁は、全員一致で、CAFC判決が、とくに、審査履歴エストッペルと、均等論のエレメント・バイ・エレメント適用について審理不尽だとして差し戻した(53)

 ヒルトン・デービス最高裁判決は、均等論を再確認し、その適用をパイオニア特許やエクイティの場合だけにせまく限定した従来の下級裁判決を否定する一方、均等を発明全体ではなく個々のクレームについて判断すべきだとし、かつ審査履歴エストッペルの立証責任を転換することによって、均等論の暴走にハドメをかけたのである(54)。後者によって、地裁では、クレーム下限を6にした理由が特許性にかかわるものでないことを、ヒルトンが立証しないかぎり、ワーナーの勝訴が確定する。 

3.2.権利の価値: 

 米国におけるプロパテント運動のもうひとつの方向として、前述した特許主題やクレーム解釈、それに後述する陪審制の問題など専門的な争点とくらべて、より素人受けする現象が、損害賠償額や和解金額の高騰であろう。 たしかに、1982年にはじまる行政府のプロパテント運動によって洗脳された陪審や、逆にそのぶん弱気になった侵害被疑者が、知的商品価格のバブル化に拍車をかけていることはたしかだろう。ただ、現象はもうすこし注意深く観察する必要がある。前述の超高額判決のうち、ハネウエル対ミノルタは陪審評決後の和解だし、リットン対ハネウエル(55)は地裁JMOLで逆転、レメルソン対マッテルとアルペックス対任天堂(56)はいずれもCAFCで逆転している。ポラロイド対コダック(57)は2社独占(複占duoply)市場の争奪戦であった。

 ポラロイド事件と比較するため、2社独占供給者間の最近のケースを調べてみよう。ライトハイト対ケリー事件判決(58)では、原被告とも中堅企業なので、新聞をよろこばせるような超高額判決ではないが、逸失利益と合理的ロイヤルティによる損害賠償の決定に関して興味深いケースである。原被告とも貨物車両固定具(荷扱い中トラックを倉庫ドックに固定する装置)のメーカーである。原告は2種の装置を販売、うち1種に自社特許を使用しているが、特許非使用装置のほうが被告装置(原告特許を侵害)と競合、さらに原告はトラック・レベラーという別商品(付随商品)も販売している。

 地裁は、原告装置2種+トラック・レベラーの売上げをもとに逸失利益を算定、さらに、被告売上高のうち「侵害がなかったとしても原告売上げにならなかったであろう」非競合金額についても、原告逸失利益の50%を合理的ロイヤルティと算定した。

 CAFCでは争点ごとに反対意見や賛成意見が交錯したが、多数意見は、「侵害者が、特許権者がこうむる損害を予見できたはずの場合、特許権者はその損害を回収できる」という「合理的予見テスト」を採用(トラック・レベラーのみ否認)、また、合理的ロイヤルティは、パイオニア特許の場合および特許権者がライセンスを開放しない方針である場合とくに加重するとして、結局、判決額は、原告商品純売上高の75%、被告純利益の33倍に達した。

 どうやら、「合理的予見テスト」による超高額判決は、典型的なゼロサム・ゲームである2社独占市場の特徴のようである。これを完全競争にちかい市場に安易に類推適用するわけにはいかない。損害賠償額(とくに逸失利益)は市場構造の関数である。 

3.3.権利の実現: 

 行使されない権利は権利ではない。「闘争がなければ権利はない」。「闘争において汝の権利を見出せ」。「権利が闘争の用意をやめた瞬間から、それは自分自身を放棄することになる」(59)。特許権の適正な価値(=正義)は、訴訟における攻撃防御を通じてのみ実現される。前述した超高額訴訟の成行きがこれを物語っている。

 訴訟における事実の最終的な認定者は陪審である。憲法第7修正は「普通法の裁判では・・陪審トライアルを受ける権利が保存されなければならない」と規定する。もちろん両当事者が合意すれば裁判官が事実認定をおこなう(ベンチ・トライアル)が、かつてはまれだった特許訴訟における陪審トライアルが、近年急増している。

 陪審トライアルによる結審件数は、1969年と70年にはそれぞれ8件、3件、結審総件数の6%、2%しかなかったのに、93年と94年には、それぞれ54件、47件、結審総件数の71%、53%を占めるにいたった。ちなみに、特許権侵害訴訟の提訴件数は、93年、94年それぞれ1,618件、1,723件と、89年に比べてそれぞれ29%、37%アップしている(60)

 こうなった原因は、「一般に、陪審は特許権者に有利な判断をおこなうので、それによって、事実認定を上訴審から隔離する道具になっている」(61)ことにあるといわれる。もともとアメリカ人のカルチャー基盤のなかに刷りこまれているエジソン神話が、1980年代、レーガン政権にはじまるプロパテント運動によって増幅された結果、近年、個人発明家に有利な陪審評決がぞくぞく生みだされており、これが、産業界、とくに後発投資者であることの多い大企業の投資リスクを増大させている。

また、このような事態が連邦司法そのものの信頼性を低下させることをいちばん憂慮しているのが連邦最高裁である。

 1996年最高裁のマークマン判決(62)をみてみよう。地裁原被告ともクリーニング会社である。原告Markman(以下「マークマン」)の特許は、「光学読取装置が、所定のステーションを通過するすべての物品上のバーコードを読みとって、・・在庫トータルを記録、・・在庫への不正な追加や脱漏を探知、場所を記録する装置」をクレームしている。一方、被告Westview(「ウエストビュー」)の製品は、光学読取装置が、衣類に添付したタグ上にバーコード表示された顧客名、衣類名、料金を読みとって、請求管理をおこなうものである。

 マークマンは、ウエストビューを特許権侵害でペンシルヴェニア州東部地区連邦地裁に提訴した。地裁で問題になったのは、マークマン特許クレーム中の「在庫(inventory)」という専門用語の意味である。マークマンは、「在庫」が、衣類だけでなく金銭や請求管理をもふくむと主張、これに対して、ウエストビューは、特許明細書や包袋から判断して、これが衣類のみを意味すると主張した。

 陪審はマークマンの主張を採用して、ウエストビュー製品によるマークマン特許権侵害を認定したが、地裁判事は、法律問題としての判決(JMOL)(63)によって陪審評決をくつがえし、非侵害の判決をくだした。CAFC大法廷は、クレーム解釈は法律問題だから法廷の領域に属するとして、地裁JMOLを支持した(64)

 1982年のCAFC設立以来めったに特許事件を扱うことのなかった連邦最高裁は、均等論のヒルトン・デービス事件(前述)とともに本件をとりあげた。最高裁は、特許クレームの解釈が、憲法第7修正(1791年)当時、陪審の領域だったかどうかを詳細に検討した結果、「クレーム慣行は1836年以前は制定法上の認知を受けていなかったし・・また、1870年以前は制定法上の要件ではなかった。歴史的淵源のなかには現代のクレーム解釈に関する直接の先例はない」(65)と判断、「本法廷としては、これを判事と陪審のいずれに分担させるべきかの判断基準をほかに求めなければならない」。「特許文言の意味を確定するには、陪審より判事のほうが適任である・・。文書の解釈こそ、判事がいつもやっており、解釈の訓練を受けていない陪審よりよい仕事ができる可能性の高い分野である」としてCAFC判決を容認した。

 この判決は、地裁での特許権侵害訴訟の実務に大きなインパクトを与えている(66)。まず、すでにほとんどの連邦地裁で、判事が、トライアルの前に、クレーム解釈だけを目的とするいわゆるマークマン・ヒアリングをおこなっており、トライアルのショー化にハドメがかかりつつある。第2に、プロパテントの陪審を回避するため、すでに主として被告側によって重宝されていた略式判決(67)の比重がさらに高まっている。第3に、クレーム解釈は侵害の決定に対して大きな影響力をもつので、マークマン・ヒアリング後の判事命令による和解が促進される現象がみられる。さいごに、クレーム解釈は法律問題としてCAFCの強力な再審権限に服することになった(68)

 以上、ヒルトン・デービスおよびマークマン両判決を通じて、米国連邦裁判所が戦っている相手こそ、米国史の中でユニークな地位を占めるポピュリズム(人民主義)である。建国当時におけるハミルトン財務長官のフェデラリズム(連邦主義)とジェファーソン大統領(知的財産法の根本規範である憲法1条8項8文(69)の起草者といわれる)のポピュリズムとの対立は、決して融合することなく、こんにちまで、あざなえる縄のごとく交互に米国政治を覆ってきた。1982年にはじまる米国プロパテント運動は、まさにそれまでの巨大連邦政府による規制型フェデラリズムに対する反発として現れた。最高裁の上記両判決は、かかるプロパテント・ポピュリズムに対するアンチパテント・フェデラリズムからの巻き返しととることができよう。 

3.4.権利の限界: 

 さいごに、4分の3世紀のあいだ知的財産権の最強のライバルであった反トラスト法の最近の動向をみておこう。知的財産権の行使に対する反トラスト法の抑止力は、米国司法省の1988年および1995年ガイドラインで死滅したわけではない。司法省の1995年ガイドラインは、司法省としては知的財産権による市場力の推定を採用しないといいながら、「この問題に関して法が不明確であることを認める」という(70)。ガイドラインは行政機関である司法省の方針にすぎない。米国は三権分立の元祖の国である。裁判所はレーガン政権のプロパテント政策に左右されない。1982年以降で重要な判決がすくなくとも2件ある。

 1984年最高裁のジェファソン・パリッシュ病院事件判決(71)は、直接には知的財産権の事件ではないが、判決の前提としてつぎのようにいう。「反競争的強制の可能性があれば、当然違法が成立する。たとえば、政府が売り手に対してある製品に関する特許や同種の独占権を与えている場合、ほかでその製品が買えないこと自体、売り手の市場力を推定させる・・。特許によって付与される市場力を利用して、第二の製品の市場における競争を制限し、特許による独占権の範囲を拡張しようとする企図は、かかる第二の市場における競争を実質的に減殺する。だから、買い手が別の(抱き合わされる)製品を全量特許権者から買うことを条件として、特許製品を売ったりリースすることは違法である」(72)

 この直後に言い渡された第9巡回裁データ・ジェネラル判決(73)の事案はつぎのようである。被告データ・ジェネラルのミニコンNOVAは、NOVA-CPUと専用オペレーティング・システムRDOSから構成され、このクラスのミニコンでは大きな市場占有率を占めていた。被告は、RDOSとNOVA-CPUをバンドルして販売していたらしい。NOVAの買手は、大部分、いわゆるOEM業者である。これらOEM業者は、RDOSを動かす付加価値アプリケーション・プログラムを開発し、これをNOVAに付加価値して最終ユーザに販売するという業態であった。したがって、OEM業者や最終ユーザーのもとには、RDOSでしか動かないアプリケーション・プログラムの大量のモジュールが資産として蓄積されており、他社のシステムに転向しようとすれば、この資産を放棄せざるをえないという状況にあったらしい(「lock-in」)。かかる状況下で、原告デジダイン等は、NOVAの命令セットを実行できる独自のCPU(NOVAエミュレータ)を発売すると同時に、データ・ジェネラルに対して、反トラスト法違反のタイイン(抱き合わせ)を訴因とする先制提訴をおこなった。

 問題はタイインの要件のひとつ「抱き合わせ(タイイング)商品の経済力」の有無である。これについて地裁判事は、1)売手がタイイング製品市場で支配的地位を有する場合、または、2)タイイング製品が特許または著作権の保護を受けている場合、「経済力」(「市場力」をふくむ上位概念)の存在が推定されると説示、陪審は、被告が、タイイング製品市場において十分な経済力を有していると評決したが、判事は、この原告有利の陪審評決を否認した(JMOL)(74)。JMOLの理由は、著作権もトレード・シークレットも相対権であり、とくにプログラムのアイデアは著作権で保護されないから、法的参入障壁とはいえないというものである。

 高裁は地裁のJMOLをふたたびくつがえして、陪審評決を支持するとともに、知的財産権による法的参入障壁について、地裁の判断の誤りを大要つぎのとおり指摘した。1)「互換OSを開発しようとすれば、かならず被告の著作権とトレード・シークレットを侵害する」という被告自身の証言がある;2)また、「製品上に特許などの独占権があれば、他から製品を入手できないこと自体、経済力を推定させる」との判例を最近の最高裁判決(前述ジェファソン・パリッシュ病院事件)が確認している;3)コンピューター・ソフトウエア著作権保護の相対性についても最近の判例は懐疑的だ;4)また、「タイインは競争戦略だ」という被告自身の証言もあり、被告が経済力を意識的に行使していたことがあきらかだ;5)RDOSの著作権は、問題のタイインを当然違法とするに十分な経済力を推定させる。

 行政府である司法省はこの判決に大反対(前述1995年ガイドライン)で、これ以後、この判決を修正すべく毎議会(米国の議会は2年で1会期)に「データ・ジェネラル法案」などと称される法案が上程されているが、いずれも審議未了になっている。ただ、前述したように、1988年議会閉会まぎわにPTO職員の俸給法案とからめて成立した特許法271条(d)(5)が、抱き合わせを特許権濫用事由からはずしたものの、これも市場力を有しないことが条件になっているので、知的財産権を市場力とみなすかどうかというかんじんの問題には決着がついていない。 

おわりに 

 以上述べてきたように、米国におけるプロパテント運動といっても、ミクロに観察するほど、さまざまのベクトルがみえてきて、とうてい一筋縄で説明できるものではない。あえてまとめてみるとつぎのような状況になるだろうか。

 まず、米国におけるプロパテント運動には、かなりの程度、ポピュリズムの波に乗った行政府の−−とくに通商的動機にもとづく外国向けの−−デマゴギーがあるようである(75)

 つぎに、CAFCの初期の判決のなかには、たしかにかなり強烈なプロパテント判決があったことはたしかである(76)。また、統計によると、 地裁クロ判決がCAFCで逆転するチャンスが10分の1なのに対して、地裁シロ判決がCAFCで逆転するチャンスは4分の1である。もっとも、この統計をつきつけられた当時のCAFCマーキィ長官(前述プロパテント判決(77)の起草者)が、かかる「馬鹿げた、邪悪な」結果志向の統計によって、CAFCがプロパテント偏向だなどといわれるのは心外であり、法廷の唯一の偏向は、法自体の統一的な適用にあると語った由である(78)。たしかに、米国の裁判官は終身官であり、彼/彼女の任命者(大統領と上院)より、職業的には、はるかに長命である。新設の法廷が、年を追うごとに政治から中立になってゆくという米国権力分立制のいい面がここにでている。1974年新設の国際貿易委員会(ITC)などでも同じ現象が観察される(こちらは任期9年−−これでも大統領(2期8年)や上院議員(6年)より長い)。ヒルトン・デービスやマークマン判決には、法の信頼性を守ろうとする米国司法の悲願がにじみだしているようである。 プロパテントといわれる米国においては、世界最強の反トラスト法が健在で、技術促進と自由競争確保というふた つの国家目的にあいだに絶妙な抑制均衡(checks and balances)−−静的な均衡ではなく、化学平衡のようなダイナミックな抑制均衡−−のシステムが実現している。

 さいごに、最近の米国知的財産権システムは、情報化時代の開幕とサービス産業への急傾斜を反映して、むしろ著作権において大きく動いているが、これについては稿をあらためて論じることにしたい。 

 

. 「プロパテント」、「アンチパテント」いずれも、「ヤリ得」などと同じく卑俗な響きすら持つことばである。その内包、外延ともにさだかでなく、学問的な分析に耐える概念ではない。ただ、人やその主張をグループ分けするのに便利なラベルだという点で、ここではあえて使っている。もちろん、「パテント」といっても特許だけのことをいっているのではなく、知的財産権一般に対する好悪の念を代表させている。

2. Motion Picture Patents v. Universal Film Manufacturing, 243 U.S. 502 (1917); Carbice of America v. American Patent Development, 238 U.S. 27, 75 L. Ed. 89 (1931); Leitch Manufacturing v. Barber, 302 U.S. 458, 82 L. Ed. 371 (1937); B. B. Chemical v. Elmer Ellis/Magic Tape, 314 U.S. 495, 6 L. Ed. 367 (1942); Morton Salt v. G.S. Suppiger, 314 U.S. 488 (1942); National Lockwasher v. George Garrett, 137 F. 2d 225 (3rd Cir. 1943); International Salt v. U.S., 332 U.S. 392, 92 L. Ed. 20 (1947); Ira McCullough v. Kammerer, 166 F. 2d 759 (9th Cir. 1948).

3. International Business Machines v. U.S., 298 U.S. 131, 90 L. Ed. 1085 (1936).

4. US v. Loew's, 371 U.S. 38, 9 L. Ed. 2d 11, 83 S. Ct. 97 (1962).

5. Automatic Radio Mfg. v. Hazeltine Research, 339 U.S. 827, 94 L. Ed. 1312 (1949).

6. Zenith Radio v. Hazeltine Research, 395 U.S. 100, 23 L. Ed. 2d 129 (1969).

7. Walter Brulotte v. Thys, 379 U.S. 29, 13 L. Ed. 2d 99 (1964).

8. Laitram v. King Crab, 244 F. Supp. 9 (D. Ala. 1965).

9. American Photocopy v. Rovico, 359 F. 2d 745 (7th Cir. 1966).

10. Zenith Radio v. Hazeltine Research, 395 U.S. 100, 23 L. Ed. 2d 129 (1969).

11. Lear v. John Adkins, 395 U.S. 653, L. Ed. 2d 610, 89 S. Ct. 1962 (1969).

12. Bruce B. Wilson, "DOJ Luncheon Speech, Law on Licensing Practices: Myth or Reality? or Straight Talk from 'Alice in Wonderland'", a speech made before the American Patent Law Association, Washington, D. C., January 21, 1975.

13. AMERICAN LAWYER, March 1992.

14. 本間忠良「技術と通商−ウルグアイ・ラウンド貿易関連知的所有権(TRIPS)協定について」『知的財産の潮流−知的財産研究所5周年記念論文集』(知的財産研究所、1995年)。本間忠良「TRIPS協定がめざす21世紀世界像」『日本国際経済法学会年報』5号(1996年)。

15. U. S. Department of Justice, "Antitrust Enforcement Guidelines for International Operations", CCH TRAD. REG. REP. 24 (November 10, 1988).

16. Continental TV v. GTE Sylvania, 433 U.S. 36, 53 L. Ed. 2d 568, 97 S. Ct. 2590 (1977). Compare, Jefferson Parish Hospital v. Hyde, 466 US 2, 80 L Ed 2d 2, 104 S Ct 1551 (1984) / Digidyne v. Data General, 734 F. 2d 1336 (9th Cir. 1984). Also compare, "DOJ Antitrust Guidelines of Licensing of Intellectual Property" (April 13, 1995), reprinted in BNA: PATENT, TRADEMARK & COPYRIGHT JOURNAL (hereinafter "PTCJ" ), Vol. 49, at 714 . Also ibid., n.10.

17. See e. g., Wall Street Journal, April 9, 1997.

18. Fed.R.Civ.P.50(a)(1):「トライアル中、一方当事者がある争点についての弁論を完了したのに、それでも、合理的な陪審が同争点について同当事者有利の認定をおこなうのに十分な、証拠にもとづく法律上の根拠が存在しない場合、・・法廷は同当事者に不利な「法律問題としての判決」の申立てを許可することができる」。この申立てはトライアル後でも更新することができ、その場合は、法廷が、法律問題の決定を留保したまま事件を陪審に送ったものとみなされる(同(b)項)。

19. Schenck v. Nortron, 713 F. 2d 782 (Fed. Cir. 1983).

20. "DOJ Antitrust Guidelines for Licensing of Intellectual Property" (April 13, 1995), op. cit.

21. カール・マルクス『資本論−−経済学批判』(大月書店、1968年)1部1編1章4節。

22. Drahos, Peter, A PHILOSOPHY OF INTELLECTUAL PROPERTY (Aldershot, England: Dartmouth, 1996), at 101.

23. ibid., at 122.

24. ibid., at 135.

25. 35 U.S.C. 101.

26. E. g., Schwartz, Herbert F., PATENT LAW AND PRACTICE (Federal Judicial Center, 1988), at 43ff / Harmon, Robert L., PATENTS AND THE FEDERAL CIRCUIT, 2nd ed. (The Bureau of National Affairs Inc., 1991), at 27ff.

27. E. g., Patent and Trademark Office, United States Department of Commerce, "Examination Guidelines for Computer-Related Inventions", 61 FR 7484 (February 28, 1996), reprinted in PTCJ, Vol. 51, at 426.

28. Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303 (1980).

29. 35 U.S.C. 271 (g).

30. United States Credit Systems v. American Credit Indemnity, 59 F. 139 (2d Cir. 1893).

31. Gottchalk v. Benson, 409 U.S. 63, 34 L. Ed. 2d 273, 93 S.Ct. 253 (1972).

32. Diamond v. Diehr, 450 U.S. 175, 67 L. Ed. 2d 155, 101 S. Ct. 1048 (1981).

33. In Re Alappat, 33 F. 3d 1526, 31 USPQ 2d 1545 (Fed. Cir.1994) , en banc.

34. In Re Warmerdam, 33 F. 3d 1354, 31 USPQ 2d 1754 (Fed.Cir. 1994).

35. In Re Lowry, 32 F. 3d 1579, 32 USPQ 2d 1031 (Fed. Cir. 1994).

36. See n. 25.

37. E. g., State Street Bank v. Signature Financial, D.C. Mass. No. 94-11344-PBS (March 26, 1996).

38. equivalentsの訳語としては「均等」より「等価」のほうが適当と思われるが、古くから使われている用語なので(たとえば清瀬一郎『特許法原理』156頁(1922年))、ここでは「均等」を使っている。

39. Schwartz, Herbert F., op. cit., at 69. ヒルトン・デービス判決が言い渡されたいまとなっては、あんがいいい定義がない。たとえばBLACK'S LAW DICTIONARY, 5th ed. (West Publishing Co., 1979), at 486は均等論をほとんどFWRテストと同視しているし、 Harmon, Robert L., op. cit., at 178/191は均等論をエクイティだといいきっており、いずれも本判決で問題になったところである。

40. Graver Tank & Mfg. Co., Inc. et al. v. Linde Air Products Co., 339 U.S. 605, 70 S.Ct. 854, 94 L.Ed. 1097 (1950).

41. Id., at 607.

42. E. g., Charles Greiner & Co. v. Ultraseal, Ltd., 781 F. 2d 861 / London v. Carson Pirie Scott, 946 F. 2d 1534 (Fed. Cir. 1991).

43. 均等の判断を陪審にゆだねることについては多くの批判があり、その筆頭が本件CAFC判決に対するプレーガー判事の反対意見であろう。See Hilton Davis Chemical Co. v. Warner-Jenkinson Co., Inc., 62 F.3d 1512 (Fed. Cir. 1995), at 1540。

44. Mannesmann Demag v. Engineered Metal, 793 F. 2d 1279 (Fed. Cir. 1986).

45. 339 U.S., at 608.

46. Id., at 610.

47. Id., at 608.

48. Hughes Aircraft Co. v. United States, 717 F. 2d 1351 (Fed. Cir. 1983). この事件は最高裁で本判決待ちになっていたが、1997年4月21日、CAFCに差し戻された(U. S. Supreme Court No. 96-1297)。

49. Pennwalt Corp. v. Durand-Wayland, Inc., 833 F. 2d 931 (Fed. Cir. 1987), en banc, cert. denied, 485 U.S. 961 (1988).

50. 339 U.S., at 608.

51. Warner-Jenkinson Co., Inc. v. Hilton Davis Chemical Co., -- U.S. --, 117 S. Ct. 1040 (1997).

52. Hilton Davis Chemical Co. v. Warner-Jenkinson Co., Inc., 62 F.3d 1512 (Fed. Cir. 1995).

53. 本間忠良「最近の判例−−Warner-Jenkinson Co., Inc. v. Hilton Davis Chemical Co., -- U.S. --, 117 S. Ct. 1040 (1997)」『アメリカ法』1998−1(日米法学会、近刊)。

54. 本判決を援用して陪審の均等評決をJMOLで逆転させたケースがはやくも出現している。E. g., Ampex Corp. v. Mitsubishi Electric Corp., Civ. No. 95-582-RRM (D.C. Del., June 18, 1997)。

55. Litton systems, Inc. v. Honeywell Inc., Case Nos. CV 90-93/90-4823 MRP (C.D.Ca. 1/6/1995).  なお、地裁JMOLはCAFCでくつがえされ、それがヒルトン・デービス事件とともに最高裁で差し戻しになった(U. S. Supreme Court No. 96-874, 3/3/97)。

56. Alpex Computer Corp. v. Nintendo Co., Ltd., CAFC, Nos. 95-1191/95-1229, 11/6/96, PTCJ, Vol 53. とくにこの事件は、陪審の均等論評決に対する審査履歴エストッペルによる逆転勝利という点でも興味深い。

57. 789 F. 2d 1556 (Fed. Cir. 1986).

58. Rite-Hite Corp. v. Kelly Co. Inc., 56 F. 3d 1538 (Frd. Cir. 1995), cert. denied.

59. イェーリング、村上訳『権利のための闘争』(初版1894年)(岩波文庫)139頁。

60. Administrative Office of the U. S. Courts, U.S. Courts: "Selected Reports (1994) (1995), Table C-4, U.S. District Courts, Cases Terminated, By Nature of Suit and Action Taken During the Twelve Months Period Ended Sept. 30, 1994 (1995)". Also, Blonder-Tongue Laboratories v. University of Illinois Foundation, 402 U.S. 313, 91 S. Ct. 1434, 28 L. Ed. 2d 788 (1971).

61. Siffert, John S., "Simplify Jury Instructions in Patent Cases", N. Y. L. J. (March 1995).

62. Herbert Markman and Positek, Inc. v. Westview Instruments, Inc. and Althon Enterprises, Inc., U.S., 116 S. Ct. 1384, 134 L. Ed. 2d 577 , 64 USLW 4263, 38 USPQ 2d 1461 (1996). また、本間忠良「最近の判例−Markman v. Westview, 116 S. Ct. 1384」『アメリカ法』1997−1(日米法学会、1997年)127頁。

63. See n. 17.

64. 52 F. 3d 967 (Fed Cir. 1995).

65. 116 S. Ct. 1384, at 1391ff.

66. Badenoch, George E., "Proceeding in the Gray Area After Markman", 2 No. 9 INTELL. PROP. STRATEGIST 1 (June 1966).

67. Fed.R.Civ.P.56. Also, Glazer, Steven D. and Steven J. Rizzi, "Markman: The Supreme Court Takes Aim at Patent Juries", 8 No. 5 J. PROPRIETARY RTS.2 (May 1996).

68. Higbee, Paul N. Jr., "The Jury's in Patent Cases: Markman v. Westview Instruments", 3 J. INTELL. PROP. L.404 (Spring 1996).

69. United States Constitution, Article I, Section 8, Clause 8: [The Constitution gives Congress the power] To promote the Progress of Science and useful Arts, by securing for limited Times to Authors and Inventors the exclusive Right to their respective Writings and Discoveries.

70. See n. 20, n.10.

71. Jefferson Parish Hospital District 2, et al. v. Edwin G. Hyde, 466 U.S. 2, 80 L. Ed. 2d 2, 104 S. Ct. 1551 (1984).

72. 466 U.S., at 16.

73. In Re Data General Corp. Antitrust Litigation, 734 F. 2d 1336 (9th Cir. 1984), cert. denied.

74. See n.18. 当時はJNOV(judgment non obstante veredicto)と呼んでいたが、 1991年連邦民訴規則改正によっていまの略称JMOLに変わった。

75. これについては本間忠良「TRIPS協定の特異性」『貿易と関税』1997年2月号がくわしい。

76. See n. 18.

77. See n. 19.

78. Harmon, Robert L., op. cit., at 640.