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本間忠良 衝撃の新刊 知的財産権と独占禁止法−−反独占の思想と戦略

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経済法あてはめ演習60選(日本語)Antimonopoly Act  Exercise 60 Cases

情報革命についてのエッセイとゴシップ(日本語) Essays and News on Information Revolution

論文とエッセイ(日本語)Theses and Essays

 

Working Paper (03-1-26)

e-ビジネス・モデルの研究

本間忠良 

目次

1.冬来たりなば春遠からじ

2.オモチャ−−e-Toys

3.アパレル−−Boo/GirlShop/Bust/LandsEnd

4.日用雑貨品−−WebHouse/Kozmo/Webvan/Peapod/TescoとSafeway/Wine

5.家具−−FurnitureFind

6.ゲーム

7.総合プラットフォーム−−Amazon

8.旅行サービス−−Travelocity/Expedia/Orbitz/Priceline

9. e-ショップの絶対優位点−−Rei-Outlet

10.低迷からの脱出

11.e-企業者の条件

 

 

1.冬来たりなば春遠からじ

 本サイトでは、煩瑣を避けるため、e-コマース・ドメイン名の「ドット・コム(.com)」はすべて省略している。

 2000年4月14日ネット株暴落、いまも依然として低迷を続けている。たとえば−−
  Pet: 2000年2月上場価格(IPO)$11→一時14→3→廃業。
  Garden:1999年秋$12→5。
  Webvan:1999年11月IPO$15→7→廃業。
  e-Toys:1999年春$86→6→1→廃業。
  BarnesandNoble(Web部門):1999年5月IPO$18→9。
  CDNow/Drkoopは運転資金すら詰まっている(1)

 一般投資家が、資源の適正配分ができた勝ち組と、それができなかった負け組を識別できないために株価総崩れになった。勝ち組も増資などによる資金調達ができなくなったため、みずから大企業に買収されることによって生き残りを図っている。ブランド確立を目指して重い広告にworking capital(流動資本)を浪費したつけがまわっている。

 勝ち組候補の第1は、既成各カテゴリーのトップである。新規参入の資金動員が困難になったため、既成組のしぶとさが目立つ。第2は、あたらしいビジネス・モデルの創始者たちである。たとえばeBayがすでに利益を出しはじめている。第3は、消費者に実質的な利便を与えるe-コマースである。B2C株の暴落が、ストック・オプションで引きとめていた人材の流出(たとえばB2Bへ)を招くのではないかという懸念がある。「インターネット革命の真の目的は、株式市場を利用したねずみ講ではなくて、よりよいビジネスをつくりだすことだから」。e-ショップの経営指標としてcash burn rate(現金燃焼速度――増資しないであと何か月キャッシュがもつか)というのが使われているが、Business Week ("BW") 00-10-23は、Amazonで28か月、BarnesandNobleで15か月と予想している。

  1999年クリスマスはe-コマースにとっての分水嶺だった。史上最大の消費者がそこへ押しかけ、そして失望した。クリスマス・ギフトのおもちゃを注文して、間に合うように届かなかった消費者は、2度とネットなんか使うもんかと言っている(KBKidsの例)。苦情の大部分は配達遅延(不着53%、延着による代替品購入30%、部分不着26%、返品15%)。[最大需要ロスの法則−−季節品ビジネスの宿命](引用文中[ ]は私のコメント、以下同じ)。数で前年の5倍、金額で3倍の急成長はe-コマースの限界を超えた。Toys-R-Usは、11月中旬、断続的なトラブルの後、短時間ながら受付を停止した。「金持の苦労」ではすまない。e-コマースの全体の評判がかかっている。デザイナー・グッズのBlueflyは、1999年e-メール照会で麻痺状態になった経験から、2000年は回答をある程度自動化しようとしている。書店のBordersも、2000年2月、ネットを止めるまでしたが、顧客登録の簡略化のために大改造を実施した。「ネット顧客は閑人ではなく、忙しい人たちだ」。もちろんデリバリーがボトル・ネック。Resource Marketingが50サイトをテストした結果、20%が延着ないし不着だった。もっとも、たいていの大型e-ショップでは1-2%だと言っているが、それでも問題だということも認めている(2)。BarnesandNobleは近々流通センターを2つ新設するが、速達用はメンフィスのFedEx発送ハブのすぐ近くで、西海岸向け通常用はリノ郊外[Amazonと同じ!]にある。

 ニューヨークのネット誌(3)は、ベビー用品ネット・ショップのBabygear(2000年7月、女性コミューナル・サイトi-Villageのi-Baby部門を吸収)が清算に追いこまれた原因として、Babygearトップが「資金不足(icy funding environment)のため」と他人事のように言っているのに対して、消費者ガイドのBaby Bargainが、吸収(拡大)以来不着クレームが急増していることを指摘(これの方が真の原因ではないかと)反論していることを報じている。ネット購買の手間も大いに問題[だからAmazonのOne Click特許が重要]。サイトを訪問した顧客のなんと88%が購買を断念してチェックアウトしている(Andersen Consulting調べ)。顧客行動分析が重要:1999年10月オープンした化粧品のSephora(Louis Vuitton傘下のclicks-and-mortar)は、ネット顧客が新製品よりリフィル志向だろうと予想していたが、意外にも、ベスト・セラーはGucciのRush香水とBeneFit Kittenボディ・パウダーという最新製品だった。そこで、同社は、2000年、新製品をトップ・ページに掲げて、美容コンサルタントを強化する方針に転じた(店頭にはいつも何人も置いて対面販売しているのに、ネットには前年2人しか置かなかった)。

2.オモチャ−−e-Toys

 1999年クリスマスに大化けしたe-Toysは、2000年のクリスマス商戦が不振(予想の半分−−といっても前年なみ)で、前年のデリバリー問題を克服するため投入した巨額のインフラ/マーケティング投資の回収が遅れ、これをカバーする新規投資が得られないため破綻した(4)。巨大e-ショップの草分けで、後述のbooなどと違って、ファンダメンタルズもしっかりしていただけに、株式市場の過剰なペシミズムが悔やまれる。

 これが引金になってほかのメガe-ショップにもパニックが及ぶと、情報革命が数年遅れることになる。もっとも、これは、バブル・クラッシュ後に巨大投資をおこない、後発のAmazonやToysRusからの競争を軽視した特異な経営判断ミスのせいだったのかもしれない。たとえば、ブランド品アウトレットのBlueflyは、昨年同期比売上90%増、客単価も向上していて、(採算はともかく)依然元気である(5)

3.アパレル−−Boo/GirlShop/Bust/LandsEnd 

 2000年5月、英国の巨大e-ショップBoo(高級ブランド衣料)が、開業半年で破綻した。今のところうまくいっている例と比較して、成否の分かれ目を探る。

 Boo:そもそもの馴れそめは、1992年、スエーデンの文学生Ernst Malmstenが幼稚園時代のガールフレンドでモデルのKajsa Leanderと再会、ニューヨークで同棲をはじめたときにさかのぼる。Malmstenはニューヨークで北欧詩のフェスティバルを開催、マスコミの注目を引いた。ふたりはスエーデンに帰って、出版業を開業、ついで書籍のe-コマースに転じた。これが成功して、数百万ドルでコングロマリットに売った。1998年、ふたりは高級衣料のe-コマースを企画、これに出資者たちが飛びついて、開業時までに、パリLVMH傘下のeurope@web、イタリーBenetton傘下の21 Investimenti、ボストンのBain Capital、NYのGoldman & Sachsなど富豪や投資会社が計1億ドル以上出資した。このへんからMalmsten自身がバブル心理におちいり、それが出資者たちにも反映して、バブルの連鎖反応がはじまった。有名人が出席する派手なパーティがマスコミをにぎわした。本来は、こんなときの経営者には、鋼鉄の自制心と「蛇のごとき聡さ」−−後述AmazonのJeff Bezosにみられるような−−が要求されるのだが・・。技術、ファッション、資金、宣伝、人員(当初430人、トップ交代頻繁)とも超重戦艦(「Star Wars」)級――社長談。ホームページは、3Dアニメやヴァーチャルを多用、ふつうのPCでダウンロードするのに数十分かかる。初日には50%のビジターが接続失敗。ものすごく使いにくい――買いにくい。買物アシスタントのMs. Booもうるさいだけ[MS Officeのイルカもそうだ](開業前、Ms. Booのために米国から高名なヘア・ドレッサーを招聘して話題になった)。Forrester Researchのサイト設計専門家Randy Souzaはいう:「やってはいけないことの見本みたいだ」。商品もNorth Faceのジャケット、DNKY、New Balance、Jil Sanderのテニス・シューズ、Paul SmithのTシャツなど世界ブランドばかりで、年商目標は6千万ドル以上だったと思われるが、ぜんぜん届かなかった。業界コンサルタントは、インターネット・アパレルで1千万ドル以上は無理だといっている。それにしても印象的だったのは、出資者のうち、とくに米国証券筋の逃げ足の速さであった。「ネット」バブルというが、じつは、バブルを演出して一般投資家を誘いこみ、すばやく売りぬけるクイック・マネーのいつもの陰謀だったと見るのが正しいだろう(5.5)

 Girlshop:1998年、Laura Eisman(33才、もとMary ClairやFamily Magazineのグラフィック・デザイナー/アート・ディレクター)がニューヨークの自室(IDK)で開業、初期投資は$15,000(装置とプログラマー謝礼)。業態は、若い女性むきデザイナー・オリジナル・アパレルの販売。現在は従業員10人で、郊外の倉庫階上に移った。年商$2,000,000強で黒字。最近で1日平均60件注文あり、注文金額は1件平均$100、マークアップ率約100%[=粗利50%。とすると、月商$180,000、粗利$90,000、人件費1/3として$30,000、一人平均$3,000といい線いっている。ふつうの小売店ではマークアップ率25%、粗利20%程度]。サイトのホームページは、絵がシンプルなためアクセスが軽く(数秒)、あかるいカラーと曲線で統一している。ページは契約ブティック別。成長はめざましいとはいえないながら着実で、「私たちはニッチェ市場での少量多種注文に専念しているので、商品・価格とも万人むきとは思っていない」(「 」は社長談、以下同じ)。契約ブティックも8軒から40軒に増えた(ほとんどが無名ながら「ホットな」都会感覚派)。「Soho(これは地名)あたりで少量の買物をする ファッション・コンシャスな25-35才のニューヨーカーが常連客」。「デザイナーも、低リスクで顔が売れるので、喜んでサンプルを送ってくる」。注文があると、メッセンジャーでデザイナーからとりよせ、Girlshopで包装・発送する(双方とも流通在庫ゼロ)。「今年はローカルTVでファッション・ショウをやりたいと思っている」(6)

 Bust:1993年、Debbie Stollerなど女性3人が手持ち資金ではじめた季刊誌Bustは、ゼロックス・コピーにホッチキス止め、1部$5という質素なものだが、セックスやフェミニズム満載の一般女性誌とははっきり一線を画して、着実に読者を増やしてきた。1998年、既成のネット・マーケットプレースに加入(手数料15%、1ページ、品切れ表示不可)、化粧品やアクセサリー(といってもブランド物ではなく、たとえば刺繍の携帯電話ケース$35など)のconsignment(委託販売)をはじめた。はじめは月商$1,000程度だったが、2000年までに購読者5万人、オンライン売上げも5倍に達した。この時点でe-コマースVCのRazorfishがBustとそのウエブ・サイトを買収(経営・編集陣はそのまま)、ウエブ・デザイナーに依頼してオープン・ソースのe-コマース・ソフトを入れ、7ページのしゃれたミニ・デパートに変身[品切れ表示はもちろん、市場分析もできるそうだが、名前におそれをなして私は実見はしていない]、雑誌の購読者10万人、ネット月商$2万に達した(6.1)。バブル期に上場してまだ資金力のある大手にみずから買収されたのも、いま中小サイトの生 き残り策のパター ンになっている。2年前なら(または2年後なら)自分で上場していただろう。この危惧はあたった。Razorfishは、Bust誌の月刊化と読者25万人をめざして拡張したのが裏目に出て資金に詰まり、2001年10月、Bust誌を売りに出したが難航、ついに創業者のStollerをふくむ生え抜きスタッフを首にした。憤慨したBust.comの支持者たちは、Yahooに独自のホーム・ページを立ち上げ、再起を期している(6.2)。コミュニティ・サイトが、目先の利益しか眼中にない資本家を入れて拡張し、破綻するのも一つのパターンになっている。

 Land's End:このエッセイの中で、私は、アパレル(衣料)部門にこれほど深入りするとは思っていなかった。私にとっては縁遠い世界だし、そもそもアパレルをハイテク産業だとは夢にも思っていなかったのだ。だがこの考えは変えなければなるまい。アパレルは情報革命の波をもろにかぶっている。1例をあげよう。カタログ通販大手のLand's End が、必死にe-コマースへの変身をめざしている。もともと、Land's End のホーム・ページはユニークなもので、サイズを言ってやると、そのサイズの3DCGモデルが目的の衣服を着て、ぐるぐる回って見せるというものだった(6.3)。いろいろアドバイスもしてくれる。Land's End のバスが全国をまわって、女性の体型を測定していた(6.4)。何をやっているのかと思っていたが、いまわかった。Land's End が、最近、チノ・パンツの受注生産をはじめたのだ。近々ジーンズへも進出する由。いくつかのサイズと好みを言ってやると、それがバスで集めたデータと照合され、最適のデザインがメキシコの縫製工場へ送信される。そこで、CAM (Computer-aided machining)が生地をカットし、縫製して発送する。まさにコンピューターのDell がやっているSCM (Supply Chain Management)である。Land's End のマネージャーは、在庫と返品率の軽減が経営にとっていちばん大きいと、Dell の社長と同じことを言ってる(6.5)。ここまでくると、e-ビジネスの1つの決定的なモデルが見えてくる。インターネットを利用した多種少量生産モデルである。

4.日用雑貨品−−WebHouse/Kozmo/Webvan/Peapod/TescoとSafeway/Wine

 WebHouse:逆オークションで有名なPricelineのWalker元社長(文系、旅行雑誌出身、理想家タイプ、2000年末退任)は、彼が特許を取ったPricelineがすべての商品やサービスに通用するはずだと信じていた。彼の私財を中核として集めた6億ドルの資金ではじめたWebHouseモデルでは、顧客はまずクレジット・カード番号を登録、彼の言い値を参加メーカーが受諾したら契約が成立、指定店でその金額を払い、商品を受けとる。WebHouseは、指定店に正札価格との差額を払い、差額プラス若干の手数料をメーカーに請求する(のち、顧客がとりあえず全額を払って、後日リベートを受けとるように変更)。派手な宣伝もあって、オープン当時から週数万人のアクセスがあった。これが挫折した。

 挫折の原因は、1)メーカーが懐疑的だったこと(PepsiCo:「持ち出し一方で得るところがない」。Kellogg:「1品種独占なら参加する」。[どちらもe-マーケットプレースがわかっていない])、2)日和っているメーカーを引きこむためにはまず実績を作らなければならないのだが、4月ネット株バブル崩壊の巻き添えで、追随投資が止まったこと(メーカーが参加しないため、WebHouseが独自でディスカウントし、それが週百万ドルにも達していた)、3)システム設計が最後まで不調だったこと(正札価格の地域差に対応できなかったこと、途中でシステムやサイズが頻繁に変わったこと--憤慨した技術者が退職)の3点であろう(7)。[トラヒックの多さからみて、ビジネス・モデルそのものの欠陥だったとは思えない]。

 Kozmo:2001年4月、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、首都ワシントンなどで、ネットによる食品雑貨やビデオCD類(レンタル)の宅配をやっていたKozmoが受注を停止した。Kozmoは1997年4月創業、2000年4月上場、1時間以内宅配保証ということで、忙しいプロフェッショナルやカウチポテト族に重宝がられていたサイトだけに、この挫折を惜しむ声が多い。Silicon Alley Reporter ("SAR")主筆のJason McCabe Calacanisもその一人で、彼は、Kozmo挫折の原因を、1)サービス・エリア拡張が早すぎたこと、2)同業者(たとえばUrbanfetch)との値下げ競争で傷を負ったことに帰している。もっとも、Calacanisは、1)については、先発利益を確保するためにはやむをえなかったし、また2)については、Kozmoの愛用者は価格よりも便利さに惹かれていたので、月50ドルの会員制にすればやっていけたのではないかといっている(8)。ビジネス・モデルそのものに欠陥があったわけではない。ニューヨーク、東京、香港のような過密都市でこそ成立するビジネス・モデルであろう。

 Webvan:1999年、カリフォルニア州フォスター・シティでLouis Bordersが創立した日用雑貨e-コマースのWebvanは、30分以内配達(一定金額以上無料配達)を掲げて、サービスを全国に展開し、各配送センターに1日8,000件の受注能力を持たせた。これはふつうのスーパーの数倍で、フルに動けばはかり知れないコスト・ダウンになるという計画だった。とくに大きなまちがいは、ゼロからの出発を意識しすぎた宣伝費の巨大さである。売上げの25-35%を宣伝費に投入した(一般の雑貨業で1%)。これで、初上場(IPO)で集めた8億3,000万ドルを使い果たし、2000年7月、会社更正法をこころみたあと清算に追いこまれた。アパレルのBooとおなじく、誇大妄想ビジネス・モデルの失敗と言っていいだろう。

 Peapod:業界最古参(1989年創業)のPeapodは、2000年4月と2001年7月cash burn out(資金燃え尽き)の危機に見舞われたが、2回ともオランダの食品大手Aholdの出資によって救われた。主要市場のシカゴでは、Aholdのクリ―ヴランド流通センターから供給を受けている。配送料は、注文金額によって10ドルから無料(100ドル以上注文)まで。依然低空飛行ながら、当事者は、シカゴで競合していたWebvanの顧客がゴッソリもらえると、むしろあかるい表情である(8.4)。Peapodは、新オーナーAholdの哲学にしたがって、一度全国に展開したサービスを大都市にしぼり、無料配達をやめ(まとめ買いを奨励するため、最小注文50ドル、75ドルまでは配達料10ドル、それを超えると5ドル、平均客単価132ドル)、品揃えも縮小して、なんとか実質(プロフォーマ)ベースの黒字にたどりついている。一見縮小均衡だが、在来型のビッグ・ビジネスAholdが、e-コマースの均衡解をとことん追求した結果である点が心強い。

 TescoとSafeway:他方、イギリスに本社がある日用品clicks & mortar(店頭ネット兼業)Tescoは、1996年以来、欧州各国に展開した数百店をベースにネット宅配をおこなって、高い成長(年3%以上)をとげている(現在ネットだけの固定客100万人、客単価123ドル、年商4億2,200万ドル、年利益(推定)700万ドル。ネット投資5,600万ドル。ネットふくむ総年商300億ドル、利益16億ドル)。米国のようなSF的集中コンべヤー・ラインのかわりに、人手を使って各支店の店頭から集荷・配達している。店内集荷にはカートに搭載したコンピューターが最適経路を指定、請求書を作成する。配達時間は平均25分。配達料金として1オーダーあたり7ドルもらっている。このビジネス・モデルにはすでに追随者が現れている。このモデルが、人口密度が高くて均質(homogeneous)なイギリス[日本ならもっとそうだ]だから成り立つと言って批判する人もいる(8.5)。たしかに、Carrefourもパリやリヨンで同じことをやって成功している(8.6)。ただ、すくなくとも、うまくゆく(viable)ビジネス・モデルの1つがあることは証明された。そういう米国で も、大手チェーンSafewayがこのモデルに乗って、同社e-コマース・サイトGroceryWorksにTescoからの投資を呼びこみ、既存ストアを拠点とする「ストック・ピック」方式を開始した。集荷・配達は分散方式だが、受注はセンターで受けて、コンピューターで最適ストアに流している。

 Wine:ワインはビッグ・ビジネスだが、禁酒法時代から残っている複雑怪奇な州規制(州によって、また、流通段階によってちがう)のおかげで、e-コマース化が徹底的に妨げられてきた。それでもWine(資本金5,000万ドル)/WineShopper(同4,600万ドル)/EVineyard(同2,000万ドル)などによる市場開拓の結果、2005年にはなんとか消費量の5-10%がe-コマースで達成できそうなところまできた。だが、WineShopperは、2000年8月、Wineと合併、 Wineそのものも、2001年春、会社更正法申立て、EVineyardに吸収された。なぜ小が大を呑む結果になったか。3社のビジネス・モデルがおおきくちがっているのだ。Wineは、上述のBooやWebvanのモデルで、巨大な宣伝費を使い、資金燃焼速度との競争で敗れた。ほかに、州規制を避けるため、ワイナリー、卸店、小売店いずれの免許も自分では取らず、すべて地方の卸店を通したため、コスト高になっていた。WineShopperは、全米ワイン卸業組合と提携して、書籍におけるブック・カタログのような全国ワイン・データベースを作ろうとした。ビジネス・モデルとしては情報革命の本流を行っていたのだが、長年の規制に安住している卸業界のやる気の無さが致命傷になった。唯一生き残ったEVineyardは、いちばん地道で、たいへんな手間をかけながら各州で小売りの免許を取り(だから州ごとのWebページを持っている)、ネットで受注してから卸店に発注するというDellモデルで25-30%の小売りマージンをとり、2001年第四四半期にはついに黒字化、Wineのドメイン名、顧客ベースなどの知的財産権資産をわずか9百万ドルで買収してWine by EVineyardと改名した。

 米国では、オンライン雑貨というビジネス・モデルそのものに対する懐疑がまだあるが、牛乳配達が復活しつつあることからも想像できるように、インターネット注文・戸別配達モデルが成立する解が存在することは確実で、これを正確に算出することもいまや可能である。上の成功例でもまだまだ改良の余地はありそうで、たとえばForrester ResearchのRobert Lubinは、既存の市場とバッティングしないという点で、Tesco/SafewayモデルよりPeapodモデルのほうが好ましいし、配達料もPeapodよりもっとまとめ買い奨励効果がだせるはずだと批判する(8.7)

5.家具−−FurnitureFind

 家具は、おそらく、最もe-コマースになじまない商品のひとつだろう。座ってみないでソファを買う人がいるだろうか(タッチ&フィール問題)。品質の均一性が一般に予想される本や家電や包装食品とちがって、家具は量産品であってもはるかに多様である。金額も大きい。配達中の傷などで返品率が35%にも達する(金額が大きいだけに痛い)。事実、e-コマース・ブームと同時に創業したLiving、Funitureという大手e-コマース・ショップが、2000年夏、たてつづけに倒産している。Furnitureなどは、タッチ&フィール問題に対処するため、CADを使って、仮想屋内での家具の配置シミュレーションまでやっていたのに・・。

 だが驚くことがある。家具のe-コマースは、ネット大不況期とまでいわれる2001年の各四半期を通じて急成長しているのだ。このあたらしいビジネス・モデルの代表としてFurnitureFindを紹介しよう。同社はもともとミシガン州西南部の家族経営の家具店だった。これが質素なe-コマース・サイトを開いたのだが、顧客の受けがよく、次第に商売を大きくし、同時にビジネス・モデルを変えてきた。いまは10万種のマスター・リストから選んだ1万種の商品をオンラインで売っている。といっても在庫はゼロである(大きいものだけにこれがメリット)。注文を受けてから手配するコンピューターのDellモデルなのだ。もちろん楽な商売ではない。徹底的な商品知識教育を受けたサポート・スタッフ数名が年中無休で常駐するコール・センターを持っている。ほとんどの顧客が1度はコールしてくる。この点でもDellや後述のAmazonと共通点がある。家具運送会社数社と提携しており、返品率は3%の由である。1,400ドル以上は配達料無料だが、客単価は1,400ドルちょっとである。Furniture(やアパレルのBoo)のようなファンシフルな技術フィーチャーは使っていない。本質的には、商品より 情報を売るあた らしいビジネス・モデルだといってよい(アパレルのGirlShopもそうだった)(8.8)

6.ゲーム

 インターネット・ゲームには2種類ある。ひとつはプレー料金を払う(pay for play:1月$10-20が相場)ハードコア・ゲーム(難しい、ハードウエアも高級)。もうひとつは無料(広告つき)カジュアル・ゲーム(やさしい、ハードウエアもふつう)。現在、加入者数、損益とも後者が圧倒的優勢になりつつある。一例をあげよう。95年設立のTENは、月$20の会費でハードコア・オンライン・ゲームのサイト「プロフェッショナル・ゲーム・リーグ」を開設、プロの勝負を有料で観戦する人もふくめて加入者が一時は25,000人に達したが、その後伸び悩み、年商$15-20Mに対してコスト$20M、ついにpogoと改称、カジュアル・ゲームの無料サイトに変身した。現在、月3百万人の新規ビジターが、2.5時間プレーする。年齢層はずっと上がり、半数が女性である。これが広告会社に注目され、年商も5割アップした(もうすぐ黒字化の予想)。広告方法にもいろいろ工夫がされるようになった。バナーだけでなく、待機や完了時、全画面広告をだしている。もっとも、高級ハードウエアの廉価化によって、固く結束したマニア群を持つハードコア・ゲームにも復活の可能性がでてきた。Ultimaは有料だが、会員は、ゲームのデバッグから改良、そしてキャラクターの創造、オークション売買 までやる[おそらくゲーム・ハウスのバックアップあらん]。Microsoftはハードコア(月$10)/カジュアル両方やっているが、前者のFighter Ace II(荒地で巨大車両を乗り回す)は、車両にTOYOTAと大書して、あたらしい広告の方向を示している(9)

 ゲームといって軽くみるのは大きなまちがいである。ソニーやマイクロソフトにはそれがわかっている。子供たちは学校の予習復習をそっちのけにしてゲームに入りびたりである。学校教育のかわりにゲームで教育を再建しようという動きさえある。ゲームは単なるエンターテンメントというよりもっと本質的な世界像の転回を示唆している。子供たちはふたつの世界を持っている。現実世界と並行して実在する仮想世界である。この仮想世界の中で愛が交わされ、欲望が満たされる(現実世界ではすでに喪失されてひさしい)。ゲームの世界の中だけで通用する貨幣がいくつも出現している。Mojoもそうだが、Thereのゼアバックスはゲームのキャラクターに着せるリーバイス・ジーンズや履かせるナイキ・シューズをクレジット・カードで決済している(もちろん現物も送られてくる)。Thereははじめテストで300人のモニターに各100ドルのゼアバックスを贈呈したのだが、意外なことに、モニターの大部分ははこれを換金するかわりにThere内でオークションなどの取引をするほうを選択している(9.2)。私たちの現実世界とは、ほんとうは私たちが そう思っていただけの仮想世界だったのではないのだろうか。フィリップ K.ディック的な現実崩壊を私たち目撃しているのではないのだろうか。

7.総合プラットフォーム−−Amazon

 AmazonはWall Street Journalのe-コマース人気投票で常時第1位である(9.3)。全米のe-ショップ中、Amazonの顧客数は38百万人でトップ、価格が安いばかりではない。なんといっても、その顧客管理の見事さには驚くばかりである。Open Source運動の闘将Larry Lessigの最近著”The Future of Ideas”の案内が発行日に私のメールに入っていた。前著”CODE”はBarnesandNobleから買ったので、ほかの過去の買物から帰納したに違いない。 私は即座に注文した。The Wall Street Journalの一読者は「Orwellian」(George Orwellの小説「1984」にでてくる独裁者Big Brotherのようになんでも知っているという意味)と言って気味悪がっている(9.5)。ふつうの書店にはこの真似は絶対できない。もちろんすごくよくできたrelational databaseのおかげだが、そのできかたがはんぱではない。私はほかにもSue Graftonのミステリーなんかも買っているのだが、専門書とは区別して推奨してくる。買い物が多くなるほど推奨が的確になる(こちらから編集もできる)。日本の昔の作家の雑文などには、古本屋のおやじがいろいろ掘出し物を売り込みにくることなど、自慢半分に書いているが、Amazonは数千万人の顧客全員にそれをやっている。文化の巨大なpopularizationである。 

 Amazonの物流管理の基地は、1999年にネヴァダ州の砂漠の中に作った5棟の巨大な自動化倉庫である。コンベヤーの延長が18Kmに達する。徹底的な自動化で、ここでの従業員数は、2000年末の常勤4,400、非常勤7,200人から、2001年末のそれぞれ3,700人、4,000人にまで減らした(この間に、売上げは972百万ドルから1.12十億ドルへとはじめて十億ドルを突破し、取り扱い品目数は10-15%アップしている)。合理化によって、注文完了までのハンドリング・コストは、2000年末の13.5%から2001年末の11%へと下がったが、さらにこれを9%まで下げる計画である。この自動化倉庫の中心は25百万ドルしたクリスプラント選別機である。2001年のクリスマス・シーズンには、これを10時間2シフトで動かして、1日20万個(1年前の30%アップ)を出荷した(9.7)

 Amazonでは毎日2万件の苦情(ほとんどがe-メール)を受け、200人の顧客サービス係(時給は新人で$10.5、ベテランで$16)が処理する。問題がこじれると、顧客サービス係は、送料を免除したり、ギフト券を発行して顧客をなだめる権限を与えられている。顧客サービスは伝統的ビジネスでもトリッキーな仕事だが、顧客が品物を見ないで買い、急成長でいつも過負荷になっているe-コマースではこれが倍加する。Amazon顧客サービスのビル・プライス部長は、顧客サービスをいくつかの単純なルーティンに還元(1,400の既製語句ライブラリーから選択・組合せ)している一方、最も重要な部分は機械化できないと言う。苦情の中には「攻撃的ないしわいせつな書評を削除しろ」というのがよくあるが、これに対するライブラリーは「ただちに削除します」と「Amazonは表現の自由を尊重します」との2種あって、その選択は顧客サービス係各人の判断にゆだねられる。Amazonは、顧客側の責任と特定できない21日以上の延着に対しては、代品を送料前払いで再送する。顧客サービス部は報奨制度と適度のローテーション(マンネリ防止)を有する。組合はない。侮辱的な苦情に対しても個 人的感情で対処しないこと。「Amazonは巨大化・多様化しすぎでかつてのような敏捷性を失った。失望したので株を売る」(膨張)に対して「商品の延着をお詫びし、送料を返金します(具体)。会社経営についても、今後ともあなたのご意見を感謝します(受動)」と答え、顧客から「ありがとう」と再メールがきている。しかしすべての問題がこの程度ですむわけではない。クリスマス・ギフトの延着に対しては、顧客サービス部でできることはない。顧客サービスの限界もある。去年、Amazonご自慢のOne Click Checkout Serviceによる顧客側の誤入力で不要な品物が届くという苦情が頻発した。もちろん無料返品処理をしたのだが、このシステムが便利すぎるのではないかという顧客サービス部からの報告は、本社レベルで不採用になった(10)。 

 AmazonのJeff Bezos社長は、かねてから「Growth before Profit (利益より前に成長を)」と言って、開業以来1度も黒字になったことがないにもかかわらず、新分野をどんどん増やすという強気の経営を続けており、株主はハラハラしながらこれを見守ってきた(もっとも、本業の書籍とCDは黒字に転じているのに、新分野が足を引っ張っていた)。ところが、2001年第1四半期以後、依然として赤字ながら、赤字幅が期ごとに縮小し、2001年第4四半期には、ついに500万ドルの経常利益を記録した(11)これはクリスマス特異現象なので、2002年にはまた赤字に転換、8月から25ドル以上の買物に対して送料無料を常設したため赤字幅が拡大、株主をはらはらさせたが、2002年第4四半期(クリスマス)にはふたたび260万ドルの経常利益、しかも一時的費用と長期債務償還費用を除いたプロフォーマ・ベースでは6,600万ドルの通年黒字をはじめて達成した。なによりも、Amazonのビジネス・モデルが本質的に健全だったことが示されたことが大きい。資金繰り(現金燃焼速度cash-burn-rate)も、2001年7月、AOLが1億ドル出資して、さしあたり心配がなくなった(AOLは、AmazonのOne-click Checkout技術を取りこんで、天敵MicrosoftのPassportに対抗するねらい)。

 ネット書店で全米第1位のAmazonと明暗を分けたのが、店舗販売ではBarnes & Nobleに次ぐ第2位、ネットでは2位のBarnesandNobleに大きく水をあけられた第3位のBordersである。開業もAmazon、BarnesandNobleにそれぞれ1,2年遅れ、1999年クリスマス期というのにシステムがダウンしたりしてご難続きだった。これが株主からの突き上げに耐えかねて、ついにネット書店から撤退、カスタマー・ベースをAmazonに譲渡して、今後なにがしかのロイヤルティをもらうことになったもよう(12)。1業2社しか残らないというe-Bizの伝説が思い出されるが、そうではあるまい。1位も2位も赤字だし、4位以下もみんな赤字ながらまだがんばっている(たとえばBooksAMillion)。やはりProfit before Growthという経営思想の有無であろう。ジーンズのLevi'sもそうだった(がんばっているGAPと好対照)。

 やはりここで際立ってくるのがAmazonの経営思想である。Amazonは、2000年、おもちゃ最大手のToys-R-Usと合弁に入った。じつは、それ以前、両社はそれぞれ独立におもちゃのネット販売をやっていたのだが、Toys-R-Usはウエブと倉庫管理に、Amazonは気まぐれなおもちゃビジネスの在庫管理に、それぞれ手を焼いていた。合弁によって、Toys-R-Usが仕入れと在庫を、Amazonがウエブ運営と倉庫オペレーションを、それぞれ分担することになった。これが今回の好調につながっている。アマゾンは家電でもCircuit Cityとの提携を進めている。Amazonの進路がだんだん分かってきた。伝統的販売業の市場を奪うのではなく、いままで存在しなかったネット客という新市場を開拓しているのである。Toys-R-Usとの合弁がその好例である。

 Bezos社長は言う。「Amazonが今まで6年間でやってきたことのひとつは、使いやすいウエブ・サイト、信頼できる流通センター、満足を与える顧客サービス・センター、巨大なカスタマー・ベースなどからなるひとつのプラットフォームを作ることだった。いったんこれができあがると、そこには書籍だけでなくてなんでも載る。Toys-R-Usのおもちゃ、Bordersの書籍などなんでもだ」。おかげでAmazonのウエブ・サイトがだんだん混みあってきたことを地元紙でからかわれ、Amazon生え抜きの「look & feel」担当役員、34才のMs. Maryam Mohitを困惑させたくらいである(12.5)

 ドット・コム・クラッシュについてどう思うかとの質問に対するJeffの答え:「会社は株じゃない。ネット株がブームだった1999年、アマゾンのお客さんは1,400万人だった。株価が最低だった2000年、その数は2,000万人に増えた。会社が株だとしたら誰かがそれをお客さんに言うのを忘れたんだな・・ガハハハ(笑い)」(13)。[会社は株主のためだけにあるのではない。最近とみに矮小なROE教徒になってしまった日本の経営者に聞かせたい]。

8.旅行サービス−−Travelocity/Expedia/Orbitz/Priceline

 新聞を漫然と見ていると、2000年4月のネット株価暴落以来、e-ビジネス全体が総崩れになっているような印象を受ける。だが、実はそうではない。苦しいのはネットでモノを売っていただけのB2Cサイトである(Amazonについては上記)。B2Bは健在だし、ビジネスを直接の目的としないコミュニティ・サイト、コミュニティとビジネスを連結させたC2C(13.01)、そしてそれらに隣接するネット・サービス部門が高成長を続けている。サービス部門の中でも、とくに旅行サービスの快調を、ニューヨーク・タイムズが伝えている(13.1)

 いま全米航空券売上の14%がネット経由である。航空会社は30%を目標にしており、すでにこれを達成した会社もある。また、電話による引き合いも、インターネットで調べてから来るので、成約率が去年の16%から20%にアップした。ユナイテッド航空ネット部門の責任者などは、「インターネットは旅行のために発明された」と言っているくらいである。

 インターネットによる「価格情報の対称化」を原因とする航空運賃の下落が顕著で、たとえばボストン・ロス往復ノンストップの正規運賃$409が、ネットでは(いろいろ制約はあるものの)最低$199まで下がる。価格下落に適応するためには、コスト・カットが唯一の対応策だが、売上げを落とさずにカットできるコストはまず流通経費である(人件費はスト騒ぎで下方硬直)。航空会社がネットに走っているのはひとえにこれが理由である。

 航空券ネット小売りでは、Travelocity、Expediaという両横綱が好調(増収増益)で、シェア計60%、株価も2000年の3倍になっている。これら安売りネットに対抗するため、最近、航空会社が合弁で作ったのがOrbitzだが、価格維持共謀ということで、反トラスト訴訟を受けている。いま全国で売られているチケットの2%が、出発日だけ指定したいわゆる「不透明」チケットだが、逆オークションのPricelineがこれの大半を売っている。

 半年前は死んだと思われていた逆オークションのPricelineが奇跡のカムバックを見せている。2001年4-6月期、わずかながら初めて利益を計上した。売上も前年比4%増である。以前は拡張路線一辺倒で、派手なTV宣伝にもかかわらず顧客サービスに問題があり、コネチカット公正事業局から制裁を受けたほどだったが、CEOが交代して、軽量のラジオ・インターネット宣伝に切り替え、レイオフを実行、顧客サービスを大きく改善した。旅行ビジネス全体がインターネットに傾斜しているという環境の変化もあるが、個別の企業努力にも見るべきものがある(13.5)

 旅行代理店も、単なる航空券の運び屋から、より高度でクリエティヴな旅行サービスに転進しつつある。航空券のネット小売りがはじまったとき、すでに、業者間の予約システムSabreやWorldSpanが、旅行データのデジタル化を済ませていた。旅行のネット小売りは市場の自然の発展だったのである。旅行価格の下落によって需要全体は増えており、win-winゲームの好例になりそうである。

 2001年9月11日の対米テロによって旅行業界は大打撃を受けたが、逆にネット化は急速に進んでいる。供給側のねらいは、ひとえにコスト圧縮(ネット経由販売の代理店コミッションをゼロにする動きがある)だが、消費側のねらいは、競争激化によるディスカウント情報の取得にある(テロ直後旅行サイトへのアクセス数が急増した−−購買のためではなく情報取得のため−−旅行ネットが情報産業であることを端的に示している)(13.7)

9. e-ショップの絶対優位点−−Rei-Outlet

 1998年開業のアウトドア用品e-ショップReiと、そのアウトレット(シーズン遅れ商品の安売り)支店Rei-Outletが快調である。いずれもe-ショップの優位性がよくあらわれている。Rei-Outletのほうから話そう。普通の小売店にとって、シーズン遅れ商品は、愛憎相半ばという目で見られている。前シーズンの売れ残りは、資金滞留と場所ふさぎというデメリットがある一方、これをバーゲン・セールで挽回するというチャンスもある。だが、e-ショップの場合、このデメリットのほうがない。Reiのマット・ハイド副社長は言う。「ネットはアウトレットのためにあるようなものだ。バーゲン・セールまで待たなくてもコンスタントに捌けるし、在庫は地価の安い郊外に置いておけばいい。見込み客数はネットのほうが多い。なによりも、在庫情報をバーゲン見込み客にタイムリーに伝えるのはネットの独壇場だ」。ハイド副社長は、e-ショップが情報を売っていることを見抜いている。

 本店のReiは新製品のネット量販店で、ネットでないと管理できないくらいの膨大な品種を持ち、永久保証を売り物にしている。流行の高級品をフル・プライスでというRei本店のイメージが、もともと高級品ながらシーズン遅れで安いというReiOutle支店のイメージと混同されないように、別サイトにして差別化している。ウエブ・デザインもちがう。Outletの保証は90日である(保証要求はめったにないので実質は変わらないが、イメージを変えているのである)(13.8)

10.低迷からの脱出

 情報革命レースで最初に飛び出すのはe-コマースそのものより、e-コマースのインフラを提供するシステム・メーカー、プロバイダー、コンサルタントなど(厳密な意味での「IT」産業)であろう。これらをメタ・e-コマースと呼んでもいいだろう。Amazonのz-Shopsはこれを狙っている。東京都の人口と同じくらいの会員がいるのだから、その中だけで通用する「私幣」(e-キャッシュ)ができてもいいだろう。私幣が流通臨界量に達するまでは、いろいろなイベントを通してポイントをばらまく必要がある。この点で、一般に「コミュニテイ・サイト」などと呼ばれるネット共同体が有望である。NYT 00-12-25は、日本でも本格的な女性専門サイト(eWoman/WomenJapan)が育ちつつあることを大きく報道している。ネット株暴落のあおりで、いままで大量のマスコミ宣伝に依存していた重量経営のサイトが続々つぶれており、おかげで、e-コマース全体に対する過度なペシミズムが噴出しているが、冷静に事態を見ると決してそうではない。Business Weekは、半年に1度、売上や成長率を考慮してIT関連企業ベスト100社を選び、比較しているが、BW 00-11-27「誰がまだ立っているか」特集は、e-コマース市場が意外にコンシステントで、半年前20位以上の企業のうち14社が、今回でも20位以上に入っていることを報告している。同特集は、また、今回上位に入っている企業の多くが、ソフトやハード面からe-コマースを支援するいわゆる「インターネット・インフラストラクチャー」(別名「Internet-enable business」)――たとえば、ソフトでは、データ・ネットワーク監視管理ソフトのMicromuse、カスタマー・リレーションシップ・ソフトのSiebel Systems、企業ネットワーク管理ソフトのBEA Systems、ハードでは、データ・ストレージのEMC、コミュニケーション装置のSanmina、さらには半導体各社など――であり、ネット株暴落にもかかわらずこれらの企業が高成長を示している理由として、産業全体におけるウエブ技術への投資が依然高水準にある――そうしないとライバル企業に敗れるという状況が変わっていない――ことをあげている。

 ニューヨークのネット誌は、中小企業向けの会計ソフトをネット上で提供するアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)のVirtual Growthが、先週、2千万ドル以上の増資に成功したことを報じて、金額こそ大きくはないが、ベンチャー・キャピタル(VC)が帰って来つつある(ただし投資先の選別は厳しくなっている)ことを示唆している(14)。 

 1年半に及ぶe-ビジネス低迷の中から、そろそろ貴重な教訓が出てきており、それを学んだe-ビジネスが利益を出しはじめている。ダウ・ジョーンズ・インターネット指数は、1999年以来一方的に増加していたe-ビジネスの営業損失が、2000年第4四半期をピークとして、急速に縮小しつつあることを示している(14.3)。淘汰・選別が終わりつつあるのだ。

 教訓1は、成功しているネットショップのすべてが「多種少量生産」だということだ。コンピューターのDellがそうだ。アパレルがそうだ。書籍がそうだ。20世紀のビジネスは、その原型のT型フォードがそうだったように、需要を予測して(というよりギャンブル的に当て推量して)大量生産し、販売店に押しんでおいて、大量の宣伝で売りさばき、残った在庫品をバーゲン・セールやダンピングで一掃するという重いビジネスだった。「規模の利益」が20世紀生産様式の神話だった。この時代は終わった。21世紀のビジネスは、コンピューターの高度利用によって、「個」にめざめた消費者の多様な要求にきめ細かく応えつつ、効率を犠牲にしないですむ「多種少量高能率生産」である。

 教訓2は、物流に依存しない情報インテンシィヴなサービスが強いということだ。前述のTravelocity/Expedia/Pricelineの旅行3社がそうだし、オークションのeBayはもともと万年優等生だった。職業斡旋のMonster、チケット販売(といってもチケットそのものは送らない)TicketMaster、いずれも利益を出している(かならずしもGAAP(企業会計基準)準拠ではないが・・)。インターネットにのめりこんでいる銀行や証券もここにはいるだろう。不動産斡旋のHomeStoreもそうだ。モノの生産も在庫ゼロをめざしている。

 教訓3は、商品そのものがヴァーチャルであるような業種が強いことだ。Registerは1件6ドルでドメイン・ネームを買って、いろいろなサービスを付加して35ドルで再販している。よろず相談のKeenもそうだろう。いわゆる出会いサイトもここには いるだろう(14.5)。教訓3は、マスコミ宣伝に金をかけすぎると危ないということだ。広告代理店の口車に乗らないように。Petやe-Toysが反面教師だろう。店頭とネットを兼業しているclicks & mortarの強みはここにある(あとは在庫負担の問題)。

11.e-企業者の条件

11.1 幻視(ビジョン)と幻視者(ビジョナリー)

Intel会長Andrew Groveは語る[Grove氏は、80年代日本からの競争でメモリーを断念、MPUに特化して大成功をおさめたビジョナリー](15)

 消費サイドのe-コマースが去年のクリスマスで成熟点maturation(飽和点saturationより前)に達したという説があるが、それは間違っている。e-コマースの成長はS字カーブのきわめて初期の段階にある。これは、今までとはまったく違う環境関数、とくにインターネット・タイムという速い時間軸(対数目盛)を使って予測しなければならない。また、それより低い次元の話だが、実験過程の有無も考えなければならない。在来技術は、商品が市場に出る前に、技術がメーカー内部で十分実験され、成熟点に達していたものだ。しかし、e-コマースでは、アイデアが実験を経ることなく市場に出て、オンサイトでテストされている。もうひとつ[の環境関数]、情報化インフラストラクチャーは、これまでと違って、政府や一企業の力ではなく、情報化に期待する無数の大衆投資が作りだしている。市場マシーンの産物なのだ。

 e-コマースの発展は、@電子カタログ販売、A電子取引、B電子デシジョンという3つの段階に分けて考えることができる。現在は、@からAの段階にはいったところだが、Bこそが巨大な可能性を秘めている。これは、インターネットによって対称かつ透明になった市場情報をリアルタイムで処理し、そのまま企業デシジョンに直結させる経営手法である。株式市場がそうだ。[Dellのようなサプライ・チェイン・マネジメント(SCM)がこれをめざしている。自販機をPHSでつないで、需給に応じた自動的な値付けをしよういうCoca Colaの構想もそうだ。いずれも市場マシーン]。

 真に効率的な市場では、Intelでさえ、だれかほかの人のデシジョン[神の見えざる手による調和?]の歯車にすぎなくなるのではないか。市場の非効率から発生する利益[rent]はいずれ消滅するだろう。その時はビジョナリーだけが生きのびる。市場(オークション)が失敗することもある(いまの株式市場がそうかもしれない)。ただそれは、情報が不完全で、人間的なミスがあるからであって、理想形としてのe-コマースにはそれがないという前提だ。

 プライバシーや知的所有権問題もいずれかたがつくだろう。電子署名も、私たちが株式取引を毎日電話でやっていることを考えればとくに問題ないだろう。早すぎる法規制はむしろ有害だ。私たちは、いつも法や構造や慣行より先を走っていて、システムを「テスト破壊(test ruin)」している。これでいいのだ。「B2Cはもうおしまいだ、これからはB2Bだ」というムードがあるが、そうではない。新しい市場に適応する速度は、大企業より中小企業、会社より個人の方が速い。Consumerが先行してBusinessがこれを追うというパターンになるだろう[「消費者主導」が情報革命の最大の特徴]。[ビジョンといっても、前記のBooなどはバブル妄想の産物といってもよく、むしろGirlshopやBustの創始者たちが、まず自分の足場を固めて、そこから未知の領域に1歩踏み出すというみごとなビジョナリーぶりを見せている]。

 Cap Gemini Ernst & Young [世界的なコンサルティング会社]ビジネス・イノヴェーション・センター・e-コマース研究部長John Jordan博士も言う(15.1)

 e-コマースについて考える場合、強力なデータ・ネットワークがビジネスの全側面と統合されること(e-コマースの定義)によって、コマースそのものが急速に変貌しつつあることを認識する必要がある。最近のファイアーストーン(またはフォード)の製品欠陥は、会社が知るよりずっと早くネット上で広く知られていた。

 インターネットはモノ売買のマーケットプレースではなくて情報メディアだ、だからインターネットの商業化には反対だという議論があるが、これは半分正しく、半分まちがっている。Citibank CEOのWalter Wriston氏は、「金(カネ)についての情報は金そのものより価値がある」と言っている。自動車にしても、オンラインだけで買う人はたしかにすくないが、みんなディーラーへ行く前に徹底的にインターネットで価格比較している。これがわからないメーカーやディーラーは脱落する。

 情報(IT)革命の臨界質量は人口動態によって決定される。TVをじっと見ないでチャンネル・サーフする[してみるとリモコンは大発明だったんだな]、WordやExcelに「仕事」させながらインスタント・メッセージングや音楽ストリーミングをやる[「サボり」ではなく「マルチタスキング」と呼んでください]、会ったことのない人を(ある程度)信用し、取引きする(文書取引きの概念が拡散)、こういう世代が消費社会の主流になってネットワーク効果が起こったとき、e-コマース革命が始まる。ネットワーク効果は指数関数なので、過去の傾向を直線で外挿すれば、かならず過小評価になる。数百年の伝統ある商業インフラストラクチャーが変貌しつつあり、これを助けるオンライン調停、保険、エスクロウ(供託)などのサービスが出現しつつある。保守的な大企業はこの点でも適応が遅いので、B2BはB2Cのあとを追うことになろう。

 e-コマース成否の鍵は、物流コストと顧客獲得コストである。前者については、重すぎず、軽すぎず、在庫管理も容易な書籍とCDが最適解になった。食品はこれで苦労している[この点、私は若干異論がある。食品の個別配達がいま復活しつつあるのだ--上記「日用品」の項参照]。後者については、顧客数が一定の臨界質量に達し、ネットワーク効果がでてくるまで持ちこたえる耐久力が鍵になる[だから大型のマスコミ広告に大金をつぎ込むのは自殺行為]。

11.2. スピードとカリスマ

 NetscapeのBarksdaleをリクルートしたなどで有名なヘッド・ハンター兼インベスターBenchmarkのDavid Beirne は、e-コマース企業者の資質として、「早く考え、タレントをひきつけることのできる能力」をあげている(16)。上のAndrew GroveはIT系のビジョナリーだが、Beirneが言っているリーダー像は、エンターテインメント系特有のもので、既存の映画製作者のタイプである。若い男性向けマッチョ・サイトTheThreshold会長Larry Kassanoffもそのひとりで、頭の回転と話のスピードが速く、自信に満ち、独断的である。ただ、インターネットを映画、テレビに次ぐあたらしいメディアとしてしか見ていないところに限界がある(17)。情報革命の担い手は、やはりコンテンツではなく、IT世界からでてくるだろう。

 

1. Kara Swisher、「リアリティ・チェック」、Wall Street Journal (“WSJ”) 00-4-17を更新。

2. Rebecca Quick、「去年の教訓」、WSJ 00-4-17。

3. Silicon Alley Reporter ("SAR")<http://www.siliconalleyreporter.com> 00-12-5。

4. The New York Times ("NYT") 00-12-16/WSJ 00-12-18。

5. SAR 00-12-22。

5.5. Wired News 01-11-26が、Ernst Malmsten, BOOHOO: A DOT COM STORY FROM CONCEPT TO CATASTROPH (2001)を紹介している。

6. Kate T. Corcoran、「スタイル以上――巨大ショップとSOHOの比較」、WSJ 00-4-17。 

6.1. WSJ 01-4-16。このケースはむしろ別稿「本間忠良、「ネット・コミュニティ−−情報(IT)革命の原点」の好例でもあろう。

6.2. SAR 01-11-9。

6.3. NYT 99-10-14。

6.4. WSJ 00-10-18。

6.5. NYT 01-11-5。

7. Julia Anguin, et al、「ディスカウント・アウト」、WSJ 00-10-16。  

8. SAR 01-4-17。

8.4. Amber Holst、「ライバルの倒産でPeapodヒヤリ」、WSJ 01-7-23。

8.5. Suzanne Kapner、「オンライン食品の初期の勝利者」、NYT 01-7-20より。

8.6. 日経新聞(夕) 01-8-25。

8.7. Michael Totty & Ann Grimes、「はじめに成功しなかったら・・」、WSJ 02-2-11。

8.8. 前掲記事。

9. Dean Takahashi、「撃たないで!」、WSJ 00-4-17。

9.2. WSJ 03-1-8。

9.3. Michael Totty、「消費者の選択」、WSJ 01-12-10。ついでに2位以下を簡潔にご紹介しよう。2位eBay(オークション)。3位LandsEnd(アパレル、カタログと兼業)。4位RedEnvelope(主として男性対象のギフト・サイト。戦前のハバナ葉巻といった珍品もあるが、ほとんどは数十ドル程度(平均$60)。相手や場合によって検索できるのが人気。会長のMs. Hilary Billingsはデパートやカタログ通販の仕入れ係を渡り歩いたベテランで、男性のセンチメンタリズムを知り抜いている(Erin White、「緊急オーヴァーホール」))。5位GAP(アパレル、店頭と兼業)。6位LLBean(アパレル、カタログと兼業)。7位Expedia(旅行、はじめMicrosoftの子会社だったが独立)。8位1-800-Flowers(生花宅配、生花ではイメージが見える点が電話より有利)。9位Dell(コンピューター)。

9.5. 同上。

9.7. NYT 02-1-21。

10. George Anders、「アット・ユア・サービス(Amazonのケース)」、WSJ 00-4-17。

11. SAR 02-1-22。もっとも累積損失が28.5億ドルあるから、この調子では累積トントンになるために570期(160年)かかる計算だが・・。支払利息や償却費を除いたpro formaベースでは59百万ドルになる。今回の黒字にはたしかにラッキーな要素もある。ユーロの下落でユーロ建て負債の元利払い額が減ったことなどがそうだ。懸念材料もある。利益率のいい米国での売上げ成長が鈍って(3%)、海外での赤字販売が急成長している(81%)ことなどがそうだ(もっとも米国でもはじめは赤字だった)。しかし、もっと本質的には、売上げの着実な成長(23%アップ)と、合理化によるコスト削減(24%ダウン)が奏効したものだ。顧客からの苦情も激減しており、Amazonのビジネス・モデルが定着しつつあることがわかる。とくに、いままで散発的にやってきた100ドル以上注文の送料無料を常設する計画で、顧客のあたらしい購買行動を作り出すことも期待されている。Jeffは言う:「値段を下げれば販売量が増えるというのはアダム・スミスの経済学だ」。WSJ/NYT 02-1-23。

12. NYT/WSJ 01-4-11。

12.5. Nick Wingfield、「混雑と戦う」、WSJ 01-12-10。

13. インタービュー「会社は株じゃない」、Business Week ("BW") 01-4-30より。

13.01. 本間忠良、「ネット・コミュニティ−−情報(IT)革命の原点」

13.1 Saul Hansell、「航空券のウエブ販売が快調」、NYT 01-7-4より。

13.5. WSJ 01-8-1。

13.7. NYT 01-11-19。

13.8 NYT 00-9-11。

14 SAR 00-12-6。

14.3. Julia Angwin、「ドット・コムが利益を出しはじめている」、WSJ 01-8-4。

14.5. 本間忠良、「ネット・コミュニティ−−情報(IT)革命の原点」

15. David P. Hamilton、「変曲点――Andrew Groveと語る」、WSJ 00-4-17より。

15.1. Michaek Totty、「研究者」、WSJ 01-7-16より。

16. WSJ 00-4-17。

17. Bruce Orwall、「男の中の男」、WSJ 01-3-26。